2026年5月、北米のDeadlockコミュニティ大会「Night Shift」の決勝で、片方のチームがUrn(ソウルウェル)を運ばずに持ち続けるだけという戦術を使いました。相手チームは試合を放棄。その数日後、Valveがパッチで対応します。ゲームの仕様が、たった1試合の出来事で動いた例です。
この記事では、何が起きたのか・なぜ成立したのか・Valveが何を変えたのか・そして今はどうなっているのかを、パッチノートの実物と照らし合わせて整理します。結論から言うと、当時の変更の一部は現在すでに差し戻されています。ここを混同すると、古い情報のまま立ち回ることになります。
Night Shiftとは
週次で開催されているコミュニティ主催の大会シリーズで、北米(NA)と欧州(EU)の2部門があります。2025年8月に始まり、2026年9月時点で55回以上。1回あたりの賞金は2,500ドルで、本戦とは別に「Night Shift Open」という予選枠も存在します。Valveが運営する公式大会ではなく、有志が続けている定期イベントです。参加チームや注目選手、配信の視聴方法はNight Shiftとは:参加チームと注目プレイヤーの現在地にまとめました。
公式大会ではないにもかかわらず、ここで起きた出来事が開発側の判断を動かしました。競技シーンの実験が仕様の穴を先に見つけるという、対戦ゲームでは珍しくない構図です。
何が起きたか
第40回の北米決勝、Melee Creeps 対 Floormen。Melee Creeps側が取ったのは、次のような手順でした。
- チーム全員がGolden Goose Eggを購入し、見かけ上のソウルを意図的に減らす
- 「ソウルで大きく負けているチーム」という条件を満たす
- 劣勢チームに与えられるUrnのボーナス(味方全体への+35%の弾・スピリット耐性オーラ)を発生させる
- Urnを納品せずに持ち続け、保持ペナルティのタイマーだけをリセットしてオーラを維持する
本来Urnは「運んで納品することで報酬を得る」オブジェクトです。それを運搬手段ではなく、常時発動する防御バフの発生装置として使ったわけです。
相手チームのAVG選手は試合を放棄しました。理由として「本物のDeadlockの試合ではなかったから」「この戦術を正当化したくなかった」と述べています。競技として成立していない、という判断です。大会側もこの戦術を、放送が終わる前に禁止しています。
なぜ成立したのか:Golden Goose Eggの性質
鍵になったのは、Tier1のスピリットアイテムGolden Goose Egg(800ソウル)です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 購入価格 | 800ソウル |
| 孵化時の初期価値 | 400ソウル |
| 価値の増え方 | 1分あたり+90ソウル |
| 元が取れるまで | 4分27秒 |
| その他 | 孵化すると80ソウルごとに永続バフ。使うと消費され、買い直せる |
ここが重要です。卵に変えたソウルは、抱えている間はチームの「所持ソウル」として数えられません。つまり全員で卵を買えば、実際には価値が増え続けているのに、スコアボード上は「大きく負けているチーム」に見えます。
Urnの劣勢ボーナスは、この「見かけのソウル差」を条件に発動していました。負けている側を助けるための仕組みが、負けているフリをすることで悪用できたということです。カムバック要素を持つゲームが構造的に抱えるリスクで、Deadlock固有の話ではありません。
Valveの回答:2026年5月28日パッチ
数日後の2026年5月28日のマイナーアップデートで、Urn周りが集中的に変更されました。この日の変更点はほぼすべてUrn関連です。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| 出現時刻 | 10/15/20/25分 → 12/18/24/30分(間隔が5分から6分へ) |
| オーラの条件 | 保持中・落下中はオーラが出なくなり、納品中のみ発動に |
| 劣勢時のランナー | +35%の弾・スピリット耐性は本人のみに |
| 保持ダメージ | 50秒 → 30秒で運搬者にダメージ。ただし40m以内に敵がいる間は停止 |
| タイマーの下限 | 拾い直すたびに、即座に落としても最低2秒が加算される |
| 拾い直しの制限 | 落下後12秒拾えない仕様を廃止 |
| Urnの帰巣条件 | 40m以内に敵がいる限りその場に留まる。いなければ味方を最大13秒待つ |
「タイマーだけリセットして持ち続ける」という手口を、複数の角度から同時に塞いでいるのが分かります。拾い直しても最低2秒は加算される、敵が近くにいる間はダメージのタイマーが進まない代わりに帰巣もしない、そして根本的に持っているだけではオーラが出ない。
同じパッチでは、トルーパーへのパリィも調整されています(パリィしてもクールダウンがリセットされなくなり、代わりにトルーパーをスタンさせるようになった)。
その後:現在の仕様はどうなっているか
ここが一番注意すべきところです。5月28日の変更は、その後の2度の大改修で上書きされています。
| 日付 | 主な変更 |
|---|---|
| 5月28日 | 上記の緊急対応 |
| 6月4日 | 納品が陣取り方式(キャプチャーポイント)に変更。両チームが同時に進行できる形へ |
| 6月30日 | Urnが独立したオブジェクトに再設計。出現が10/15/20/25分に戻る。運搬者は看破されず、パリィもできなくなる |
| 7月9日・13日 | 移動速度などの微調整、ヒーロー別のボイス追加 |
2026年8月22日パッチ時点での現在の仕様は次のとおりです。
| 項目 | 現在 | 5月28日版 |
|---|---|---|
| 出現 | 10分、以降5分ごと | 12分、以降6分ごと |
| 劣勢ボーナス | 運搬者本人のみに最大+35%(ソウル差に応じて変動) | 本人のみ(同じ) |
| 保持のペナルティ | 45秒で価値が減り始め、さらに45秒で消滅 | 30秒でダメージ/敵が40m以内なら停止 |
整理するとこうなります。出現間隔の変更は元に戻された。オーラを消した変更は残った。緊急対応のうち、本質的な穴を塞いだ部分だけが生き残り、副作用の大きかった部分は差し戻された、と読めます。
いま「Urnは12分出現」と書いてある情報は、5月28日から6月30日までの1か月間の仕様です。現在の時刻管理はタイマー完全ガイドを参照してください。
この事件から読み取れること
- カムバック補正は「劣勢を自作できる」と壊れる。条件が見かけの数値だけだと、その数値を操作する手段が抜け穴になります
- Valveはコミュニティ大会の出来事に反応する。公式大会でなくても、明確に壊れた事例が出れば数日で動きます
- 緊急パッチは恒久仕様とは限らない。今回も1か月で大部分が置き換わりました。パッチノートを読むときは「いつの変更か」を必ず確認する必要があります
一般のプレイヤーにとっての実務的な結論はシンプルです。Urnは持つものではなく運ぶもので、現在は45秒を過ぎると価値が減り始めます。抱え込む理由はありません。基本的な考え方はUrnの基礎知識にまとめています。
出典と注意
パッチの内容と数値はDeadlock Wikiの更新履歴(出典元はSteam公式の「Minor Update – 05-28-2026」ほか)、Golden Goose Eggの性能は同Wikiのアイテムページ、大会での出来事とAVG選手の発言はPCGamesNの報道によります。大会シリーズの開催記録はDeadfragとThe Daily SPUFによります。
現在の仕様は2026年8月22日パッチ時点のものです。Valveは次の大型アップデートを9月下旬と告知しており、Urn周りは過去1年で何度も作り直されている要素なので、再度変わる可能性があります。変更の追い方はパッチノートの読み方、最新の変更はパッチノートまとめをどうぞ。




