Deadlockは、世界観をほとんど説明してくれないゲームです。ヒーロー選択画面の右下にある本のアイコンを開くと短い背景文が読めますが、それ以外の設定はボイスライン・マップの作り込み・未公開のビジュアルノベルに散らばっています。この記事では、それらを一本の流れに整理します。
結論から言うと、あの試合そのものが「儀式」です。ガーディアンを折り、ウォーカーを倒し、敵のペイトロンを潰すという勝利条件は、ゲームのルールであると同時に物語そのものになっています。
世界に何が起きたのか
超常はもともとこの世界に存在していました。ただし人々はそれを神話だと思っていた。それが変わったのが19世紀末です。日食をきっかけに「マエルストロム(Maelstrom)」と呼ばれる現象が起き、地球各地にアストラルゲートが開きました。異界への扉が開いてしまった以上、世界は超常の実在を認めるほかありませんでした。
物語の現在は、その最初のマエルストロムからおよそ50年後。ただしWardenの背景文には、世界の成り立ちがそれだけではないと示唆する一節があります。
ほとんどの人間は、超常が50年前に世界へ現れたと思っている。それは間違いだ。
アストラルゲートは既知のものが7つ、噂のものが1つ。ニューヨーク(セントラルパーク)、大西洋(バミューダトライアングル)、ヨーロッパ、プエルトリコ、異界イクシアへの接続、そして北極圏に第8のゲートがあるという噂です。この噂を追って探検隊を率い、一人だけ氷漬けで発見されたのがKelvinでした。
舞台と時代
戦場となる「呪われた林檎(The Cursed Apple)」は、ニューヨークのミッドタウンとロウアーマンハッタンです。3本のレーンにはそれぞれ実在の通りの名が付いています——York(黄)、Broadway(青)、Park(緑)。
時代設定は開発側が意図的にぼかしていますが、作中の言及から1930〜40年代あたりと推定できます。1949年に開幕したミュージカル『South Pacific』のチケットの話を、Ivy・Viscous・Doorman・ニュースキャスターがそれぞれしています。建物は1932年までのニューヨーク建築を参照して作られました。一方でShivは1950年代のグリーサー、Billyは1970年代のパンクを思わせる出で立ちで、隠れ家のコンピューターは1973年のXerox Altoに似ています。開発中のタイトルなので、時代は確定していないと考えるのが正確です。
なぜ戦っているのか——儀式とペイトロン
ペイトロン(Patron)とは、異界の古き神です。今この世界に入ろうとしているのは2柱。彼らは「儀式を完成させた者の願いを叶える」と約束しています。
その儀式の形が、2つのチームが呪われた林檎の街路で戦い、相手が自分たちのペイトロンを召喚するのを阻止するというもの。マップの各拠点を折り、最後に敵のペイトロンを2段階にわたって倒す——あの流れが、そのまま儀式の進行です。
ペイトロンとの接触は、数十年にわたって不可能であり、かつ禁じられてきました。それが二度目のマエルストロムで変わります。マエルストロムが続くのは20分から2時間で、その間だけ神秘のエネルギーが頂点に達する。1試合の長さがそのまま世界設定になっているわけです。
2柱のペイトロン
| The Hidden King(隠れし王) | The Archmother(大いなる母) | |
|---|---|---|
| 姿 | 角と黄色い目を持つ影。燃えるウィッカーマンの像に縛られている | 砕けた自由の女神の仮面。青い炎に包まれた結晶の像 |
| 陣営名 | The Hidden King's Court | The Guided Hand |
| 拠点 | 工場。ダウンタウンの意匠で、くすんだ赤煉瓦 | 美術館。アップタウンの意匠で、上流階級の白煉瓦 |
| 語り方 | 本人は直接語らず、ヘラルド(伝令)が代弁する | 同じくヘラルドが代弁する |
名前が変わっている点に注意してください。この2柱は「Old Gods, New Blood」アップデート以前、Amber HandとSapphire Flameという名前でした。少し前の日本語記事や動画は旧名で紹介しているので、調べ物をするときに食い違って見えることがあります。ボイスラインにはBroken Crown/Guided Handという別の呼び名も残っています。
2柱の目的そのものは明かされていません。共通しているのは「何世紀も召喚されることを望んできた」「新しい時代をもたらす」という点だけです。しかもHidden King側のヘラルドはArchmotherを「暴君」と呼んでおり、神の側にも対立があることが分かります。そしてWardenの一族は、ペイトロンを放置すれば人類の終わりを招くと考えています。
街を動かす組織
| 組織 | 正体 | 関わるヒーロー |
|---|---|---|
| OSIC(オカルト保安調査委員会) | あのCIAでさえ開けっ広げに見えるほど秘密主義の政府機関。夢に潜入するサンドマン部隊と、物品を扱うキュレーター部門がある | Haze(サンドマン部隊) |
| The Baxter Society | 最初のマエルストロム後に設立された怪物狩り組織。人を襲う怪物だけを狩る | Grey Talon(創設メンバー)、Shiv(現役)、Calico(脱退) |
| Venators of Saint Benedict | バチカンが派遣する狩人の集団。Baxter Societyとは友好的なライバル関係 | Venator |
| The Tunnel Rats | 各区を結ぶ地下トンネル網を使って闇取引を仕切る組織 | Mo & Krill(用心棒) |
| Fairfax Industries | スピリット兵器を作る大企業。民間軍事会社ETSを傘下に持ち、霊的廃棄物の不法投棄でEPAから制裁を受けている | Maximilian Fairfax(CEO)、McGinnis(軍事開発部門長)、Pocket(筆頭後継者) |
| Friends of Humanity | セイラム魔女裁判の判事の子孫が率いる「新異端審問」。超常の排斥を掲げる | Vindicta と Grey Talon が敵対 |
| The Mendoza Syndicate | スパニッシュハーレムを支配していた犯罪組織。Ivyに18年かけて壊滅させられた | Vyper(元)、Infernus(元) |
| Seventh Moon | 日本から渡ってきた犯罪組織。今はニューヨークの小さな一派 | Yamato |
| The Municipal Coven | ニューヨークの管理を担う魔女の組織。魂の処理とスピリットアーンの設置を行う | Trapper |
| The Paradox Organisation | 全員が仮面を被り組織の名を名乗る怪盗ギルド | Paradox |
| The New York Oracle | 20年以上続く新聞。マップのニュース売り場で見出しが流れる | 記者Allie Kincaid |
背景に出てくる場所
| 場所 | どんな場所か |
|---|---|
| The Bear Pit | 地下の闘技場。LashとBebopが戦い、WraithとMendozaが賭ける |
| Jezebel’s Billiard Hall | 教会を改装したビリヤードバー。Infernusがバーテンダーを務める |
| Lost Whisper | 最も危険な術者を封じる地下牢。Sevenが処刑の夜に脱獄した |
| Blackmore Academy | 裕福な生徒が通う高校。ApolloとGravesが在籍し、Minaもここで学んだ |
| The Baroness Hotel | Doormanが働く高級ホテル |
| The Paradox Museum | Paradoxが盗んだ品を堂々と展示する美術館 |
| The Deep | バミューダトライアングルの深海。Viscousの故郷 |
| Ixia | アストラルゲートの先にある異界。Apolloの故郷で、南イクシアは5年前にアメリカの52番目の州になった |
全38ヒーローの参戦理由
ペイトロンは「儀式を完成させた者の願いを叶える」と約束しています。つまり各ヒーローの参戦理由は、そのまま彼らの願いです。まだ願いが書かれていないキャラクターも少なくないので、その場合は正直に「明示されていない」と記しています。
| ヒーロー | 立場 | 儀式に求めるもの |
|---|---|---|
| Abrams | ニューヨークの私立探偵 | 机に置かれた魔導書と、それを狙う何者かの正体。儀式そのものへの願いは明示されていない |
| Apollo | 異界イクシアの王子。Blackmore Academyのフェンシング部主将 | 一族の名に恥じない実力を示すこと |
| Bebop | 廃品置き場で組み上げられたスクラップゴーレム | 育ての親Ms. Shellyの薬代 |
| Billy | 自ら魔術で頭をヤギに変えたパンク | 明示されていない。ペイトロンは「腐った世界を作り変える」と誘っている |
| Calico | 元Baxter Society。報酬に不満で暗殺者に転向 | 追ってくる各国機関からの庇護と力 |
| Celeste | コニーアイランドの見世物。正体はユニコーン | 賭けで魂の一部を失った仲間を救うこと |
| Doorman | 自称「駆け出しの神」。高級ホテルのドアマン | 願いは無い。儀式が終わったらホテルの仕事に戻るつもりでいる |
| Drifter | 古き吸血鬼 | 願いではなく殺戮そのもの。ペイトロンの贈り物は「おまけ」 |
| Dynamo | 大学教授。アストラルゲートの調査で肉体を失った | 知識と、今の体から出る方法 |
| Graves | リッチの手を師とする、学生の死霊術師 | 本人の願いは不明。師であるリッチのために戦っている様子 |
| Grey Talon | Baxter Societyの創設メンバー。引退した老狩人 | 息子夫婦を焼き殺した犯人への報復 |
| Haze | OSICサンドマン部隊の工作員 | 組織の命令による任務。個人の願いは明示されていない |
| Holliday | イリノイ州の保安官。Doc Hollidayの孫 | 連続殺人犯The Troubadourを討つこと |
| Infernus | イクシア系移民二世。Jezebel’sのバーテンダー | 恩人Hankの店を閉店から救うこと |
| Ivy | 命を得たガーゴイル。Arroyo家の守り手 | Mendozaシンジケートを壊滅させた後の、新しい生きる目的 |
| Kelvin | 北極で消えた探検隊の隊長。不死の科学者 | 探検で何が起きたのかの答え |
| Lady Geist | 霊Oathkeeperと契約した社交界の女性 | 若さの維持。ただし霊を縛る結界は弱まりつつある |
| Lash | 地下闘技場Bear Pitの王者 | 自分の偉大さを世界に認めさせること |
| McGinnis | Fairfax Industries軍事開発部門の長 | 願いは不明。新兵器の実地試験に使っている節がある |
| Mina | 吸血鬼。元はFairfax家の跡継ぎの婚約者 | ニューヨークの子爵(Viscount)の座 |
| Mirage | ジン大使Nashalaに雇われた人間の護衛 | 本人の願いは語られていない。ジンの国家建設という雇い主の目的を支える立場 |
| Mo & Krill | Tunnel Ratsの用心棒兼密輸業者 | 明示されていない |
| Paige | 図書館の語り部。本から物語を呼び出す書物魔術師 | 失踪した弟Bryceを見つけること |
| Paradox | 怪盗ギルド「Paradox」の一員 | 怪盗としての格を組織に示すこと。相手のペイトロンから何かを盗むのが狙いで、願いそのものは不明とされている |
| Fairfax Industriesの筆頭後継者Arin Fairfax | 父Maximilianを止め、会社を取り戻すこと | |
| Rem | 夢の世界から取り残された子ども | 家族のもとへ帰る道 |
| Seven | Lost Whisperを脱獄したオカルティスト | 神格化(アポテオシス)。人であることをやめること |
| Shiv | Baxter Societyの現役狩人。元犯罪者 | 過去の罪の償いと、組織での価値の証明 |
| Silver | 人狼の賞金稼ぎ Lilah Silver | 金。ペイトロンは「儀式を終えれば繁栄させる」と約束している |
| Sinclair | 1つの体を共有する2つの魂、HenryとSavannah | 互いの魂を分離すること |
| Venator | バチカンが派遣した司祭 Quinn Rourke | ニューヨークに巣食う悪、すなわちペイトロンの殲滅 |
| Victor | 遺体安置台で記憶なく目覚めた継ぎ接ぎの存在 | 誰が自分を作ったのか、自分は誰の体でできているのか——その答え |
| Vindicta | セイラム魔女裁判で処刑され、最初のマエルストロムで蘇った霊 | 超常の同胞を守ること。そしてFriends of Humanityへの復讐 |
| Viscous | 「深淵」から来た、超能力を持つイソギンチャク | 故郷を脅かす捕食者「Adversary」から家を守ること |
| Vyper | ゴルゴン。元Mendozaシンジケート | 新しく、安全な暮らし |
| Warden | ペイトロン阻止のために生まれた時から鍛えられた、戦闘的錬金術師の血統 | 儀式を止めること。願いを叶えてもらう側ではない |
| Wraith | ニューヨークの賭博網を一代で築いた女 | 明示されていない |
| Yamato | Seventh Moonの頭領Kaori。亡き兄の名を継いだ | ニューヨークをSeventh Moonの手中に収めること |
この表で一人だけ浮いているのがWardenです。全員がペイトロンに願いを叶えてもらうために戦っているなかで、彼だけはペイトロンの降臨そのものを阻止するために戦場にいます。味方のペイトロンを敵のペイトロンにぶつける、という発想で参加しているものの、自分の側の召喚をどう止めるつもりなのかは語られていません。ペイトロンにも本心を隠しています。
次に目を引くのがDoormanで、こちらは「特に願いは無い、儀式が終わったらホテルの仕事に戻る」という立場。Drifterに至っては殺戮そのものが目的で、ペイトロンの贈り物は「おまけ」だと言い切っています。神々の側からすれば、当てにならない駒が何人も混ざっているわけです。
まだ語られていない部分
Deadlockのロアは、本来ビジュアルノベルで語られる予定でした。現時点で確認できているのは、Lady Geistの『The Binding of Oathkeeper』、Ivyの物語、Hollidayの物語の3本。InfernusとKelvinのものも予定されており、「Old Gods, New Blood」アップデート後にはMinaのものへの言及も見つかっています。
本編がまだ開発中である以上、ここに書いた設定も変わりえます。実際、2柱のペイトロンの名前は一度変更されていますし、ヒーローの背景も更新されています。「今のところこう語られている」という前提で読むのが安全です。
出典
ゲーム内の背景文・ボイスライン・ビジュアルノベルを整理したコミュニティWiki「Deadlock Wiki」(deadlock.wiki)/確認日:2026年9月6日。Deadlockは開発中のタイトルのため、ロアは今後も変更されます。ゲームの成り立ちについては開発の歴史、ゲームそのものの魅力についてはDeadlockが面白い理由もどうぞ。




